2.有機質廃棄物の現況と目指すべきシステム

有機質廃棄物の循環システムを考えたとき、巨視的に見ると「地方型循環」と「都市型循環」の二つに分けることができます。現状の廃棄物の流れを解りやすく表すと下図のようになります。

【 現状の有機質廃棄物の流れ 】


有機質廃棄物の循環システムを形成するためには、食物連鎖による物質収支が成立している必要があります。植物は動物の飼料として、動物の排泄物、生ごみなどの食物残さ(残りかす)は植物の肥料として、過不足なくその地域・圏域で完結することが最も重要です。そのためには、地方型、都市型を問わず各地域内の資源は、「加わらず、飛び出さず」で均衡していることが必要です。

しかし、実際には海外・他圏域から膨大な量の飼料や資源の輸入・移入などがあり、それらを消費した“残さ”は、制度・技術的問題や経済的問題などにより処理しきれず、結果的にサイクルの内側から外側に向けた大きな矢印が発生しています。循環システムは成立しておりません。

私達は、上図をサイクル図として完成させるための手立てを考え、提言することが、有機質廃棄物資源の社会循環システム構築の一助となると考えました。

循環のための手立てには様々なものが考えられますが、それらをサイクル図に組み合せると次の図になります。


【 循環型社会へ向けてのサイクル 】


有機質廃棄物は非常に広い範囲で継続的に発生していますので、都度それぞれの対策を目指した多くの要素技術が研究され生み出されています。それらは非常に高度で優秀な技術であり、今後の環境保全に画期的な変革をもたらす秀逸な技術も数多く存在することでしょう。しかし秀逸な技術だけでは世の中は変わりません。法規制の縛り、立場・制度の問題、人々の意識の温度差、そして重要なコスト(イニシャルコストはもちろん、影響の大きいランニングコストも含めて)の問題など、クリアーにしなければならない課題が多くあります。もちろん技術的に未成熟の部分もあり、問題はより複雑になります。そしてこれらに共通して影響を及ぼすのが、対応負荷の大きさです。負荷が少なければ、対応もそれだけ容易になり、安価で効果的な対策の選択肢が広がります。

地方型・都市型に共通して必要なのは「無駄を省く」考え方です。必要量だけを100%消費すれば、おのずと廃棄物は少なくなります。リサイクル比率が上昇すれば、廃棄物の発生をさらに削減することが可能ですが、それには技術開発の進展とその技術を生かすバックアップ体制(法規制の適正化・補助事業など)の構築が不可欠です。また都市型廃棄物は地方型の廃棄物循環サイクルと融合して対応することが最も合理的ですので、廃棄物を“出す側”と“受ける側”の相互理解も必要になります。

これらの対応により、無駄な輸入量を減らし廃棄物を削減することができますので、理想とする循環型社会へ向けて前進することができると考えられます。

次頁から地方型及び都市型有機質廃棄物処理の課題及び展望について詳述します。