1.はじめに

リージョナルステート研究会『循環技術システム研究分科会』は、私達の住む北海道を地球環境に優しい持続可能な地域社会へ変革させるために、その基礎となる循環型社会の実現に向けた課題の検討や、期待される社会システムのあり方などの提言を目的に活動しております。

私達はいま、残された貴重な自然環境を次世代に引き継ぐ循環型社会を構築するためには、これまでの大量消費・大量廃棄と決別し、最低限に抑えた消費や、様々な廃棄物の再利用が必要であると考えます。また生活に不可欠なエネルギーは、有限資源である化石燃料から、環境に優しい再生可能エネルギーなどへ転換していくことが必要であると考えております。

しかし、世界が競って廃棄物の処理や、自然エネルギー利用のための技術を研究・開発しているにもかかわらず、まだ既存の資源・化石燃料に比べコスト的優位に立てる状況にはありません。循環型社会構築で世界をリードする西欧諸国では、資源循環を促進させるための地域システムや、新エネルギー利用に対する様々な公的支援システムの整備が進んでおりますが、残念ながらわが国では、こうしたシステムは未だ十分ではありません。

従って、私達はこれから持続可能な循環型社会を創出するために、北海道を例に取り、地域特性を踏まえた中で廃棄物・エネルギーごとに、具体的にそのあるべき姿を検討し、新しい時代に相応しい地域循環システム・支援システム実現への提案をまとめていきたいと考えております。

私達はこれまで分科会で多くのテーマについて議論を交わしてきました。その中から、有機質廃棄物を対象にした地域モデルとして、一次産業系廃棄物が主体の地方型、私達の生活の中から排出される廃棄物が主体の都市型に区分して、各地域における資源循環システムを構築するための課題と将来展望についてまとめてみました。

北海道は素晴らしい自然環境と気候、そして雄大な大地を活かした大規模・効率化農業を実現することによって、わが国最大の食糧供給基地へと成長してきました。しかし、北海道の基幹産業と言われる農業も、近年は貿易自由化の影響などによって厳しい経営環境を余儀なくされ、さらには環境保全に対する国民意識の高まりや、食の安全に対する消費者要望の増大などを受けて、大きな転換期にさしかかっております。

一方、人口が集中する都市部では、大量に発生する生活型廃棄物の対策が大きな課題となっており、都市だけでなく地方を含めた資源循環システムの検討がますます重要になってきています。

資源の循環は、地域、社会、個人、さらには業態、時代ニーズ、生産者、消費者等々、多岐多様に亘る相関の中で成り立つものだけに、最適解を一つにまとめあげることは非現実的かもしれません。しかし、だからこそ何らかの解決を少しずつ導き出し、それらを積み重ねてゆく事が重要であると考えます。本提言が、北海道の資源循環のあるべき姿を展望するための一つの参考になれば幸いです。