5.有機質廃棄物の循環システム

これまで提案してきました地方と都市における廃棄物処理のあり方と、それらを結びつけた理想型の有機質廃棄物循環システムをイメージ化すると下図のようになります。



 地方の役割は、食の安全を最優先に、農家においては農薬にかわる有機栽培による農作物を都市に提供し、酪農家においては安価な外国飼料に頼らず、農地から提供される安全な飼料によって牛などを育てて都市に提供します。その際に発生する糞尿・残さなどはバイオガスプラントで電力・熱となり有効に利用され、減容化された液肥及び糞尿・オガ屑から生産された堆肥は、農地などへ有機質肥料として還元されます。

地方における有機質廃棄物発生は食の延長線上にあると認識されますが、地方の役割は安全かつ安定した農水産物を、道民に供給することにあると思われます。

経済活動のなかで、廃棄物の発生量を低減することは一次産業として成り立つために困難な面があります。しかし安価な外国製飼料の量を減らし、適正頭数を維持しながら牧草主体の飼育に変換し、堆肥などを農地へ還元することによる土壌の活性化、畜産廃棄物から生み出すことが可能なバイオマスエネルギーの活用、その他水産廃棄物それに加えて木質系廃棄物を上手に組み合わせることで新たな有効資源が生まれるなど、今まで以上に循環を促進させることは可能です。

一方、都市における有機質廃棄物についてですが、まずレストランやホテルなどの事業系で発生する質の良い食品廃棄物は、排出者が明確であり、その安全性が担保されている条件の下に、家畜飼料として特定の畜産農家へ供給し、これを使って育成された畜産生産物の供給を受けるという循環が成り立ちます。また、家畜飼料として利用できない食品廃棄物については、乾燥減容化若しくは発酵処理したものを畑作農家へ供給し、農産物の供給を受ける循環が成り立ちます。いずれの場合も、お互いの顔が見えた状態で、お互いに供給するものの安全性が信頼できる状況にあることが、この循環が成立するための条件となります。しかし、都市で発生する全ての食品廃棄物をこの循環システムラインに乗せることは、発生量が膨大であるが故に不可能です。

食品廃棄物リサイクル法の施行により今後、排出する食品廃棄物の減量を求められ、その一手法として乾燥することにより、減量化を達成することができます。その乾燥・減量化された食品廃棄物をバイオマスエネルギー資源として清掃工場で燃やして電力を回収することは、都市ならではの有効なエネルギー回収循環システムと位置づけることができます。

次に一般家庭においては、集合住宅にディスポーザーシステムの導入を進めることにより、清掃工場での熱エネルギー回収阻害要因にもなっている含水率の高い生ゴミの量を減らし、ゴミの収集運搬にかかる経費と化石燃料の消費を大きく削減できます。また、個別住宅に生ゴミポストシステムの導入を進めることは、事業系と同様に清掃工場でエネルギー回収できる資源となると共に、ゴミの収集運搬にかかる経費と化石燃料の消費を大きく削減できます。

さらに都市環境を維持するために無くてはならない清掃工場と下水処理場を隣接して建設し、相互に補完しあうことは、建設費と維持費を縮減すると共に、有機質廃棄物である下水汚泥からも有効にエネルギーを回収できるようになります。

 以上のように、都市から排出される有機質廃棄物から熱エネルギーを回収する、サーマルリサイクルに着目した手法を推し進めることも、地球環境保全に資する都市型循環システムとなるでしょう。