(3)   下水処理場から排出される有機質廃棄物について


 下水処理場から排出される廃棄物の処理には下記の問題点があります。


ア 下水汚泥のコンポスト化処理は、資源循環の大きな担い手として期待されていましたが、頓挫している自治体が多くあります。


イ 下水汚泥のバイオガスシステムは、他の処理方法と比べて有効な処理方法なのか明確でありません。


ウ 下水汚泥をゴミと別に焼却処理することの合理性が明確ではありません。


 都市から排出される有機質廃棄物として、下水処理場から排出される下水汚泥もあります。これをコンポスト化し、緑農地やゴルフ場などに土壌改良材として利用する試みは二十数年前から続いていますが、下水汚泥中に含まれる特定されない有害物質などへの懸念から、特に農地への需要が伸びず、頓挫した自治体が多くあります。資源循環の大きな担い手として期待されたのですが、需要と供給のバランスが成立しませんでした。現在は下水汚泥のほとんどは脱水・焼却処理後、一部は建設資材として有効利用されていますが、そのほとんどが埋め立て処分されています。

脱水された下水汚泥は焼却炉の中では、自分の持つエネルギーで燃える(自燃)ことができ、地球環境に負荷となっていないと考えられますが、脱水処理過程で必要とするエネルギーは、全てが環境負荷になると考えられます。そこで下水汚泥を消化処理し、発生するバイオガスを燃料にコ・ジェネレーションシステムを導入する事例が増えてきています。バイオガス中のメタンを精製して、燃料電池の燃料とする試みが始まったことでも注目を浴びました。合流式下水道の下水汚泥は有機分が少ないため効率的なガスの発生が望めず、コ・ジェネレーションの燃料として不足するような事業所では、消化処理の加温用の熱源としてのみに利用しているところもあります。この不足する有機分の補填のために、生ゴミや木くず・庭ゴミなどのバイオマスを混ぜて、バイオガスの発生量を増やそうとする試みも実施されています。生ゴミのバイオガスシステムで述べたように、緑農地に下水汚泥の消化液の需要は望めず、結局脱水・焼却処理することになります。結局、最終的に焼却処分するのであれば、なるべく有機分は残しておいた方が有利であるという結論にもたどり着きます。

各自治体とも下水汚泥の処理には、多方面に可能性を求め検討を重ねてきています。単一の処理方法に偏ることは、その方式が破綻したときに影響が大きすぎるために、避けなければなりません。しかし、清掃工場でのゴミの焼却処理は、地球環境保全に向けたエネルギー施策の中でも、大きな位置づけとなっており、今後、長期に亘り存続する処理方式であると考えられます。下水汚泥の焼却行程で発生する余剰エネルギーは、発電してエネルギーを回収できるほど大きなものではありませんが、清掃工場で併せて焼却することにより、回収できずに捨てられていたエネルギーをも有効に回収することが可能になります。また、清掃工場にはゴミからでる汚水などを排水基準値まで水処理する設備を持っている他、清掃工場と下水処理場は処理システム上、共通する設備部分が多くあります。

 以上のように、相互に補完しあうとメリットのある清掃工場と下水処理場を隣接して建設し、水処理と汚泥処理を分担することで、お互いの施設の無駄な部分を削減することができ、有効にエネルギーを回収できる、地球環境に貢献する取り組みであると考えます。