(2)   一般家庭から排出される有機質廃棄物について


 一般家庭から排出される有機質廃棄物の処理には下記の問題点があります。

ア ディスポーザーシステムは高い利便性がある反面、行政サイドからは必ずしも歓迎されておらず、普及が促進される環境が整っていません。

イ 家庭用のコンポスターで作った堆肥などの定常的な利用先がありません。

ウ 生ゴミ排出者と、それを原料に生成された堆肥を使用する農産物の生産者との信頼関係が構築されていません。

エ ゴミの収集・運搬には、大きな労力と大きな化石燃料エネルギーが消費されています。

一般家庭から排出される有機質廃棄物である生ゴミのほとんどは、清掃工場で焼却処理されていますが、この生ゴミをディスポーザーにより粉砕し、水と一緒に下水道へ流下させるシステムがあります。

固体を水に溶かして処理を行うことは、固体のままで処理を行うのと比べて、容積が大きく増え、濃度も薄くなるために一般的に処理に要するエネルギーは不利となります。不利であるにもかかわらず下水道が普及したのは、水洗化による利便性を選択したからです。早くから下水道を整備してきた都市では、汚水の集水と雨水の排除を一本の管で同時に行える、建設費の安価な合流式下水道方式を採用し普及に努めてきました。合流式下水道方式の下水道管は管径が大きく、雨の降らない日には、その管の大きさに比べて、流れる下水の量が極端に少ないために、ディスポーザーで砕いた生ゴミが管底に堆積し臭気を発生したり、雨が降るとこれら管底の堆積物が洗い流されますが、管の許容流下量を超える降雨があった場合、この高濃度の汚水が河川に流れ出てしまう恐れもあります。

行政サイドとしては、これらの対策が執れていないとして、ディスポーザーを使った排水を排水浄化装置を設けず、直接下水道へ流すことについて自粛を求めています。しかし、最近ではディスポーザーの利便性を売りにした集合住宅も多く見られるようになってきており、住民の評判も上々のようです。排水浄化装置で発生する汚泥はごく少量であり、装置の運転に必要なエネルギーの増加に比べて、生ゴミの収集・運搬にかかわるエネルギーが大幅に削減され、前述のように清掃工場の運転にとってもメリットがあります。集合住宅でのディスポーザーシステムの採用は、多方面への効果が大きく、推奨すべきものとなると考えられます。

一方、個別住宅の場合にも、このディスポーザーシステムが有効であるかというと、必ずしもそうではありません。個別住宅ごとに排水浄化装置を設置することは、イニシャルコストとランニングコストの両面から現実的ではないからです。

一般家庭用として生ゴミ乾燥機やコンポスターなどが市販されています。生ゴミが出るたびに処理できるので、なかなか利便性は高いようです。コンポスターで上手に発酵させることが難しいのはさておき、最大の問題は作った堆肥を定常的に施肥する場所が無いことです。庭先の家庭菜園で使い切れる家庭は少ないのではないでしょうか。

ある自治体ではゴミの分別を徹底し、収集された生ゴミを堆肥化施設で処理している例があります。生分解プラスチックで作られた透明な袋に入れて収集されてきた生ゴミを、行政の担当者が一々目で確認しながら混入した異物を選り分けたり、また水切りを徹底させるために、生ゴミを新聞紙に指定した大きさにくるむことを求めるなど、排出者・行政双方の努力が必要となります。特に気温の高い夏場などには、腐敗しやすい生ゴミに手間を掛け、収集日の朝まで室内に置いておかなければならないなど、ある程度の努力が必要となりますので、意識の高い住民にしか受け入れられない可能性もあります。

集合住宅や町内会単位に生ゴミポスト(小型コンポスト化処理装置)を設置して、効果を上げている事例があります。郵便ポスト程度の大きさの装置に、微生物を多量に含む種コンポストが入っており、モーターで動く攪拌機が定期的に回転し、投入された生ゴミの好気性発酵を促し、分解させる装置です。このシステムの利点はいつでも生ゴミを捨てられることと、投入口には鍵がついていて、その生ゴミポストを利用している人を限定でき、異物の混入を防止する効果を期待できること、また、生ゴミが分解しやすい性質であることにより、年に一二度搬出作業を行えば良い程度で済むほど、減容効果が高いことが挙げられます。できた堆肥の処置ですが、好気性発酵により含水率が低くなっているので、清掃工場で燃やしてエネルギー回収できることはもちろん、堆肥としての利用を考えることも重要な選択です。

町内会単位などの一定の生ゴミポスト単位に特定の農家と[一次発酵堆肥の供給⇔農産物を購入]という契約を結ぶ手法により、都市部と農村部との資源循環が成り立つ可能性があります。生ゴミの排出者と農産物の生産者とがお互いの顔の見えている状態が、循環成立の条件になると考えられ、集合住宅や町内会と農家の契約による循環形成の可能性は大きいと考えられます。多くの人がかかわることになりますが、自分の口に入る農産物を作る肥料の原料と考えれば、異物などを混入させない分別責任意識の高まりも期待できると考えられます。この考え方は家庭用のコンポスターで処理した生ゴミにも適用でき、食品販売業などの農作物を扱う事業者が主体となり会員を募って、ある程度堆肥化した生ゴミを買い物のついでに持ち寄ってもらい、契約農家へ供給する仲介をすることにより、循環システムを構築することも可能でしょう。

これらの循環が成立するためには、緑農地を保有している農家の理解と協力が絶対条件となります。化学肥料により痩せた土地の地力を回復させるために、有機農法を取り入れるなどの動きが出てきている中で、その一方策として定着していくことを期待します。

以上のように、集合住宅でのディスポーザーシステムと個別住宅での生ゴミポストシステムは、行政サイドとしてのメリットも十分あり、廃棄物処理施策に加えるべきシステムであると考えます。