公益社団法人 日本技術士会北海道本部
       
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第121回技術交流研究会
 
  ■日  時  平成22年9月9日(木)15時00分〜17時00分
  ■場  所  札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号 Docon新札幌ビル3F会議室
  ■出席者数 16名
  ■講演概要
  ◆演 題
  魚礁の技術史と効果の推定法
  潟Gコニクス
山内 繁樹(水産)
  ◆講演要旨
 
1.魚礁の技術史
 1)魚礁技術の黎明
   海中の構造物や投石に魚が集まるとする認識は古くからあります。柿元は1600年中ごろに土佐藩で山石を投入した例や加藤清正が江戸城築城時に寄進した石材の運搬船が沈没して長くカサゴ、アイナメの好漁場になった例などを示しています。また、漬け、石塚などの伝統的な漁法で構造物に魚が集まる習性を利用している事例が採取しています。
 北海道の魚礁設置事業はホタテ資源をめぐる沿岸漁業と機船底引漁業との軋轢を契機として、1926年の小樽祝津沖での投石による魚礁に始まります。
 その後、日中戦争や太平洋戦争を背景とした食料増産を目的として北海道水産試験場函館支場による実験などが実施されています。
 現在のようなコンクリートによる魚礁設置事業が実施されるようになったのは1954年に国の浅海増殖開発事業によりコンクリート魚礁の使用を条件として国費補助の対象となってからです。
 2)魚礁ブロック開発と事業の進展
   漁民が自ら海の畠(漁場)を作ることと、戦後不況の波をかぶった漁村経済を立て直すことを目的に「漁民の漁民による魚礁ブロック」を作ることが必要とされました(菊池 1975)。1954年、他県の事例に習い菊池らにより、1m角型魚礁ブロックが試験的に製作・投入されています。この結果、コンクリートの重量のため人力による魚礁ブロックの移動は難しい、艀による投入作業ではウィンチ吊り下げ時の振れにより投入に時間がかかる等の問題が明らかになりました。このため、漁村の婦女子による移動も可能であり、ウィンチによる吊り下げも必要としない円筒型魚礁が開発されました。魚礁事業はこの後、1958年大型魚礁設置事業開始、大型魚礁の公共事業化などを経て沿岸漁場整備開発事業に至り急速に拡大されていきました。
2.魚礁の効果と推定手法
 1)魚礁性指数
   魚が魚礁に蝟集する性質の度合いを魚礁性と呼んでいます。魚礁性を魚礁区と平坦な対照区を比較した漁獲試験の結果から魚礁で多くなる量的指標と多くなる頻度から魚礁性指数を次により設定しました。
       
 2)魚礁の蝟集要因
   4種類6か所と対照区を同時に比較した漁獲結果の主成分分析を実施しました。この結果、魚礁の高さとその分散に関する主成分、空間の遮蔽に関する主成分、流れとの関係に関する主成分、競合と棲み分けに関する主成分を抽出できました。高さには生息水深幅の大きな魚種が蝟集し、採餌形態に応じて遮蔽と空間を利用し、捕食・被食の関係が棲み分けによって均衡されれることが推定されました。
 3)魚種による魚礁からの距離分布
   魚礁から2000mにわたる100mごとの漁獲を調査した漁獲試験結果より魚種ごとの距離別分布が示されました。分布は魚礁直上をピークとする逆ロジスティック型と少し離れたところにピークを持つ対数正規分布型に分かれました。分布と魚種の関係からは魚礁周辺での食物連鎖が推定されました。
 4)魚礁の蝟集量
   魚種による魚礁からの距離分布を式で表すことができるため分布式の積分と漁獲結果から魚礁での蝟集量を推定することが可能となりました。
 5)魚礁方程式
   蝟集量、対象資源量、魚礁規模の関係を次式の魚礁方程式にとして示しました。
 
 蝟集量を環境収容力の増加による資源量の増加して考えると、過去の実施された全道
 の事業量はカレイ類資源7.3%の増加が推定さました。

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