第101回技術交流研究会
●日時 平成17年9月1日(木) 15時00分〜17時30分
●場所 札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号 (株)ドーコン会議室
●出席者数 26名
●講演概要
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地球環境問題はどのようにして「顕在化」したのか
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北海道大学公共政策大学院 倉 田 健 児 氏 |
地球環境問題とは一体、どのような問題なのだろうか。この問いに答えることは、結構厄介だ。なぜなら、地球環境問題をどのような性格の問題として認識するかという問題の認識に係る視座を定めなければ、適切な定義ができないからである。
無論、認識の仕方は一様ではない。一般的には地球環境問題を事象的に捉えることが多い。この場合には、温室効果による地球の温暖化、成層圏のオゾンの破壊、海洋汚染、熱帯林の減少、砂漠化や土壌浸食などの土壌悪化、野生生物の種の減少、酸性雨、有害廃棄物の越境移動、開発途上国の公害問題の9種類の具体的な事象が地球環境問題として定義される。物理的な現象として地球環境問題を認識したものだ。
今回の講演では、こうした認識の仕方を敢えて採らない。地球環境問題を、これが何故、近年「顕在化」したのかという疑問に答えようとの視点から、まずは考える。ここで、地球環境問題の「発生」とせず「顕在化」としたのは、地球環境問題として議論の俎上に載せられる個々の物理的な現象は、何も最近になって急に発生したわけではない。数十年以上も以前から、事象としては存在し続けているからだ。
こうした事象の発生に対して、科学的な知見に基づく警告は相当に以前から発せられてきた。従って、近年になっての地球環境問題の登場とは、過去から発せられ続けてきた警告が現実の問題として社会に認知されたことを意味する。その結果として、社会がこれらの事象を解決が求められるべき問題として認識したことによって、地球環境問題は「問題」として顕在化することとなったのだ。
警告は相当に以前からなされていたものの、1980年代も終わりになってはじめて社会は、これら事象に対して解決が求められる問題であるとの位置付けを与えた。社会は何故この時期に、地球環境問題に対してこうした位置付けを与えるようになったのだろうか。
本講演では、社会において地球環境問題が顕在化していくプロセスを追う中で、顕在化に社会が果たした役割に注目したい。その上で、地球環境問題と社会との関連を詳しく見ることにより、地球環境問題をどう性格付けできるのかを示したい。
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