第99回技術交流研究会
●日時 平成17年3月3日(木)午後15時00分〜17時30分
●場所 札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号 (株)ドーコン会議室
●出席者数 24名
●講演概要
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「総 説 北 海 道 の 淡 水 魚」
〜現場の研究者から見た淡水魚の実態〜 |
北海道立水産孵化場 さけます資源部 資源保全科長 内藤 一明 氏 |
北海道にはおよそ70種の淡水魚が生息している。この数は本州以南と比べると決して多い数ではない。しかし北海道は動物地理学上の境界にある地域であり、淡水魚に関して言えば、北海道を分布の南限とする北方起源の魚類、北限とする南方起源の魚類が混在しており、本州以南とは極めて異なった魚類相を持つ特異な地域と言える。
1. サケの王国北海道:サケの仲間(サケ科サケ亜科の魚類)は稚魚期を淡水で過ごし、海に下って成長、再び産卵のため川に遡上する遡河性の淡水魚である。北海道には在来で9種のサケの仲間(亜種を含めず)が生息しているが、これはロシア極東域の11種、北米の10種に匹敵する種数で、本州以南の地域ではわずか3種しか見られないのと比べると、非常に多様性に富んでいると言える。一方、北海道はサケ科魚類の漁獲でも世界有数の地域であり、北太平洋全体のサケ科魚類の漁獲約80万トンのうち、約20%にあたる15万トン(日本全体では20万トン)を漁獲している。このように、北海道は種の多様性と漁獲の量という、質・量ともにサケに恵まれた地域であり、「サケの王国」と言って良いであろう。地域の自然はそれ自身が貴重な財産であり、北海道に住む我々はその価値を再認識することが重要であると考える。
2. 北限のウナギ、回遊の謎:北海道には少数ながらウナギが生息している。この起源については自然分布か移植かで異論がある。我々はウナギの分布について実際の河川調査、古い文献の調査の両面から研究し、北海道のウナギは自然分布であると推論した。しかし、3,000km以上離れたマリアナ海溝で産卵されたウナギの稚魚がどのような経路で回遊して来るのかは未だ謎につつまれている。
3. 雌ばかりのギンブナの社会:有性生殖をする動物はふつう父方由来の染色体(n)と母方由来の染色体(n)の両方を持つ2倍体(2n)である。1970年代に北海道のギンブナは半分以上が全雌の3倍体(3n)であることが判明し大きな話題となった。3倍体の生物はふつう不妊であるが、ギンブナの場合、卵発生に際して減数分裂をせず、また精子との核融合も行わない雌性発生を行っていることが解った。雌性発生によって繁殖したフナはすべて雌でクローンとなる。雌性発生ギンブナはその後貴重な研究材料となり、魚類の遺伝学、繁殖生理学に大きく寄与し、他の魚種の人為3倍体作成に貢献することとなった。
以上の他、北海道産淡水魚についての様々な話題を実物の写真等を用いて紹介する。本日の講演で多少なりとも北海道産淡水魚について興味を持っていただけたら幸いである。
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