公益社団法人日本技術士会北海道本部

第９８回技術交流研究会

●日時　　平成１６年１２月２日（木）午後１４時３０分～１７時３０分
●場所　　札幌市中央区北４条西５丁目　ＫＫＲホテル札幌
●出席者数　２３名
●情報交換
　・技術士全国大会報告
　・新潟中越地震報告
●講演　＂工学系大学の研究現場＂

　　　　　　　　　　　　　～　ブドウ球菌とその病原性について　～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　酪農学園大学　獣医学部　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　助教授　高橋樹史
【講演要旨】
　2000年6月に発生した雪印の乳製品による黄色ブドウ球菌食中毒事件は、不況にあえぐ北海道産業にも大きな衝撃をあたえるものでした。49年前にも同様の事件が発生していたにもかかわらず、さらに多くの被害者を生み出してしまったことは、食品加工業の企業風土と食品の安全性に関するシステムの不完全さをさらけだした『人災』という印象を与えるものでした。
　この黄色ブドウ球菌は人を含めた様々な動物の皮膚や鼻腔内などにごく普通に存在する細菌です。この種の細菌すべてが病気を引き起こすわけではありませんが、上述した食中毒をはじめ実に多様な疾病からこの細菌がみつかっています。獣医の領域では牛の乳房炎が最大の経済的損害を生み出します。この細菌は化膿病巣をつくることもあって、抗生物質などの治療薬が効きづらいことが臨床獣医師の悩みの種でもあるようです。
　化膿性病変を形成することだけでもやっかいな黄色ブドウ球菌ですが、さらに病気との関連で重要視されている問題があります。それは毒素を分泌する細菌が目立つことで、その種類の多さは『毒素の総合商社』とでも呼びたいほどです。たとえば、乳幼児で火傷のような水ぶくれを生じさせる『熱傷様皮膚症候群（SSSS）』毒素、成人にもショック症状を引き起こす『毒素性ショック症候群（TSS）』毒素、そして食中毒の原因毒素である『エンテロトキシン』などが有名で、家畜にも似た症状がみられる場合があります。
もう一つ、黄色ブドウ球菌の危険性を増大させている問題に抗生物質などに対する薬剤耐性化の進行があります。ＭＲＳＡという略称に見覚えがないでしょうか。これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌（Methicillin-resistant Staphylococcus aureus）のことで、メチシリンというペニシリンに似た抗生物質に対して抵抗性を持つ細菌が、他の大部分の抗生物質に対しても耐性を獲得していることから、代表的な多剤耐性菌として注目されています。手術などの外科治療や歯科治療の後などには抗生物質を処方されますが、もしもＭＲＳＡに感染してしまうと効く薬の種類がごく限られてしまうため、生命をおとすことにもなります。抗生物質の使用量が増すに従い、数年前までは珍しい細菌だったのが、現在ではどこにでも見られるありふれた存在になってしまいました。
　黄色ブドウ球菌は常在性であるだけに、天然痘やＢＳＥのように撲滅することができません。このように恐ろしい一面を持つ細菌とどのようにつきあっていけばよいのか、という観点からお話をさせていただきたいと思います。

　　　　　　　　　　～『夢』をデザインする　－建築家の自由と責任－　～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　北海道大学大学院工学研究科
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　都市空間計画学分野　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　助手　保科　文紀

【講演要旨】
1．「建築家」って何？
2．「建築」はどんな考えでつくられているのか
（１）札幌コミュニティードーム（つどーむ）について
（２）札幌ドームについて
（３）砂澤ビッキ記念館について
3．建築家の自由と責任
（１）感じる建築、感じない建築　― なにげない風景の中に見つける建築家の意思 ―
（２）建築家の資質　― あなたは建築家になれる？ ―
（３）『夢』をデザインする　― 誰の夢？ ―
4．design = de ? sign　　　― 異化するということ ―