公益社団法人日本技術士会北海道本部

第９６回技術交流研究会
日時　　平成１６年３月４日（木）午後１４時００分～１７時３０分
場所　　札幌市中央区北１条西６丁目
ホテル札幌ガーデンパレス

出席者数　　名
情報交換
講演　＂防災とまち（ひと）づくり＂

講演Ⅰ －遠隔地学習：ｅラーニングのすすめ－
　　　技術交流研究会
　　　　機械部門　岡田　昌樹　氏
＜要旨＞
コンピュータとインターネットさえあれば、どこでも学習できるシステム、それがｅラーニングである。北海道のように距離的に地域差のある人材育成には、必要不可欠な手法と言える。
ｅラーニングは、１９９６年頃にアメリカで商用化が始まり、その後、アメリカ経済のＩＴ分野を中核とした景気拡大策に乗り、ＩＴ技術者の養成など企業内教育に活用され、爆発的に普及しているものである。日本では、２０００年後半から注目され始め、現在、大学の社会人教育や企業の社員研修に導入され始めてきた。
ｅラーニングが普及している理由は、コストを含めた効率性であり、具体的には次のとおりである。
①好みの教育内容を場所や時間を問わず、個人の都合やキャリアプランに合わせて学べる。
②集合教育と違い、個人の能力や学習スピードに沿ったレベルで学べる。
③動画の導入により、暗黙知の修得が可能となる。
④一方的な配信だけでなく、双方向の情報交換や共有ができる。
⑤進捗チェックや成績チェック、履歴など学習記録の管理ができる。
現在、通信速度に問題があるものの、ｅラーニングはブームの傾向にあり、各ベンダーから新システムが次々と押し寄せられ始めている。しかし、重要なのは、使う側が「使いやすい道具」の範囲で使うことである。北海道技術士の場合は、次の意味で効果的に使えると思っている。
①北海道という広い大地の地域差を埋める学習　⇒　オンデマンドは現在可能
②暗黙知・形式知などをデータベース化とするナレッジ・マネジメント　⇒　現在蓄積中
③集合研修・研究をより効果効率的な「場と時間」にするための予復習教材　⇒　今後の課題
④技術士間の交流を活性化するポータルサイト　⇒　今後の課題
今後、システムの標準化やより使いやすいインフラが整えられてくるであろうが、課題はインセンティブと良質なコンテンツにある。現ＣＰＤのようなネガティブインセンティブだけではなく、熱意とバイタリティを持った技術士が北海道に溢れかえるほどの「しくみ作り」に役立たせたい。また、「技術士列伝」のように後世に残しておくべき高度な技術や技能、ノウハウなども蓄積していきたい。

講演Ⅱ －地球シミュレータの概要と研究成果－
　　　地球シミュレータセンター
　　　　　センター長特別補佐　平野　哲　氏
＜要旨＞
平成９年度から４００億円をかけて開発された地球シミュレータ（建物は別途７０億円）は平成１４年３月から予定通り運用を開始した。地球シミュレータは稼動直後の世界標準のベンチマークテストで、計算性能が２位を５倍差で引き離し世界トップとなり、この技術革新が激しいスーパコンピュータの分野で、依然として今日までトップの座を維持してきている。この性能を生み出す、ハードウェア技術、特にシステムのアーキテクチャ、半導体、ソフトウェア技術の概要と地球シミュレータセンターの運営方法、最近の利用状況について説明する。既に、地球シミュレータは、大気・海洋分野、固体地球分野、計算機科学分野、先進・創造分野で様々な研究に供されているが、世界最先端の研究の紹介とその成果についてのデモ、今後の課題について触れる。

講演Ⅲ －危機管理と組織運営－
　　　ニセコ町長　逢坂　誠二　氏
＜要旨＞
地震、火事、風水害、雪崩、遭難、事件事故はもとより、ＳＡＲＳ、鳥インフルエンザ、ＢＳＥなど、自治体は常に平常時とは違う非常事態に巻き込まれる可能性を孕んでいる。しかし、これらへの備えを常に完璧に準備しておくことは、容易なことではない。しかも、消防や警察、あるいは自衛隊のような組織とは違い、いわゆる事務屋を中心とする官僚組織は必ずしも指揮命令に従順ではない。しかも単純な指揮命令だけでは解決のつかない課題が多いのも実態だ。
こうした自治体の内部の、危機管理と組織運営について、ニセコ町長としての実体験を踏まえつつ、以下のキーワードにからめて話してみたい。