公益社団法人日本技術士会北海道本部

第９３回技術交流研究会
日時　　平成１５年６月５日（木）午後１５時３０分～１７時３０分
場所　　札幌市中央区北４条西５丁目
ＫＫＲホテル札幌

出席者数　２０名
情報交換
講演　＂地球を掘る，そして覗く＂
　　　　　－陸上科学掘削計画－
北海道大学大学院　理学研究科地球惑星科学専攻
地球惑星物理科学講座
教授　池田　隆司　氏

＜要旨＞
我々の足の下で起こっている出来事つまり地殻内部のプロセスに関して、過去にどんなことがあって現在はどう進行中なのかを正しく理解し、将来はどうなっていくのか予測したいと願う。深層掘削（ドリリング）および孔内計測は、それを直接観測できる有力な手段であり、それと地表探査の組み合わせは地殻を観察する「望遠鏡」と成り得る。これを駆使することにより、我々の生活に密着した地球科学の諸問題に立ち向かうことができる。
　・地質災害の被害軽減（地震，火山，地すべり等）
　・地球環境問題（気候変動，ＣＯ２，廃棄物）
　・隕石衝突の影響と生物の大量絶滅
　・地下生命圏の実態と、石油生成や生命の進化に与える影響
　・地球資源（石油，鉱物，地下水，ガスハイドレートなど）の探査と供給
ＩＣＤＰ（国際陸上科学掘削計画）は、国際的協力の枠組みでこれらの解明に取り組むことを目的として１９９６年に発足した。わが国も１９９８年に加盟し、ドイツ、アメリカ、中国などと共に中心となって活動している。本講演では、ＩＣＤＰのプロジェクトである、ユカタン半島チチュルブ隕石孔、ＫＴＢ（ドイツ大陸深層掘削計画）、ハワイ島の火山体掘削、雲仙火道掘削、サンアンドレアス断層、等々の実験について概観する。また、日本では既に活断層や震源域での掘削が精力的に行われてきた。特に、１９９５年兵庫県南部地震に伴う淡路島・野島断層では、断層を貫くような掘削（最深１，８００ｍ）を行い、断層近傍の地殻応力や熱流量などを定量的に把握するとともに、岩石コアによる断層破砕帯の構成物質などを明らかにしてきた。ドリリングが活断層調査の一つの手法として大きな役割を果たしている。これらについて紹介し、陸上科学掘削の現状と今後の方向性を探りたい。