公益社団法人日本技術士会北海道本部

第９０回技術交流研究会
日時　　平成１４年９月５日（木）午後１５時～１７時
場所　　札幌市厚別区厚別中央１条５丁目４番１号
　　　　　　（株）ドーコン　Ａ会議室

出席者数　　　名
情報交換
講演　＂土をトータルに診る＂
－農耕地土壌（普通畑土壌）と森林土壌について－
日本データサービス㈱
佐藤　隆一　氏（農業部門）

＜要旨＞
○農耕地土壌をトータルに診る
【結論】～農耕地土壌では、微生物の働きを高める、土つくりが大切である。
―団粒の生成―
１．土つくりの基本は水と有機物の管理
農耕地土壌をトータルに診て土の特徴をつかむため、得られた理化学性のデーターに基づいて、（１）高収量畑と低牧量畑の比較、（２）主成分分析（２４項目）、（３）重回帰分析等を試みた。
その結果、収量に大きく影響を与えている順次にみると、①排水不良性・ミネラルバランス、②微生物活性と可溶性養分、③未熟畑性と保水性、④有機物となった。さらに情報損失量を少なくするために、得られた３１項目の全データーを用いて主成分分析、重回帰分析を行った。主成分として、有機物、保水性、可溶性養分、熟畑性、透水性、微生物活性、燐酸（陰イオン）、肥沃度、養水分回流性が抽出された。得られた主成分得点を用いて、収量指数との重回帰分析を行った。
その結果、収量への影響が大きいのは、①透水性・養水分回流性、②可溶性養分・燐酸肥沃度、③熟畑性・微生物不活性、④有機物の順となった。
２．水の管理の重要性
透水性、養水分回流性の二つの主成分を除く、他の主成分は、排水不良性と密接に係わっている。この事実から、調査地域では透水性が非常に大切であると云える。そのために、土地改良の外に有機物の投入によって土壌団粒の増大を図かり、透水性や養水分の回流を高め、熟畑性や微生物活性の増進が肥沃度の向上につながると考えられる。
３．土壌の生成
調査した農地は、網走地方の常呂低地帯と能取台地に分布する畑地である。
①台地土壌の生成作用～台地土壌の生成は古気候（海水面の低下）が密接に関係している。
●褐色台地土●灰色台地土●グライ台地など何れも水との関連が大きい。
②低地土壌の生成～低地土壌は河川により運搬された土砂が、その推積された箇所の水分状況によって、褐色低地土、灰色低地土、グライ土、泥炭土のように細分される。どの土壌型においても、保水性、透水性、養水分回流性など水の動きの重要性が理解できる。
４．土と根の関係
植物は地中に根を伸ばし茎を固定するとともに、土の水分を吸収している。重回帰分析したところ、①微生物活性、②排水不良性、③ミネラルバランス、④未熟畑性、が根の伸長と関係が深いことが判った。
次に養水分回流性と燐酸肥沃度との散布図から各象限ごとに分析値を根の分布量に従って分類すると、作土の深さ、Ｃ／Ｎ比、孔隙率、ＮＨ４－Ｎ、水分率が根の分布と正の関係、排水の良否、有効態燐酸、ＮＯ３－Ｎ、土壌硬度が負の関係となっている。以上の事実をトータルに眺めると、根の周囲に酸化される基質すなわち、水や腐植などの電子供与体が多く存在し、根に電子（水素供与体）を与える状況を作ることが、土つくりのポイントと考えられる。
５．微生物の多様性
すでに述べたように根の伸長と微生物活性（根圏）の関係が大きい。道農研センター横山和成氏の「微生物の多様性が高いほど、植物の発病が少ない。」という調査結果がある。農耕地の土壌微生物群集は自然林床や草地に比べて低くなる。作物の連作や、化学肥料の連用は多様性の減少や微生物のすみわけを規制している。
○森林土壌をトータルに診る
道路法面に分布する、（１）植栽林、（２）植栽林、（３）自然林について、土壌調査、理化学性データーを用いて、主成分分析、重回帰分析（根の分布）を行い土の特徴を把握した。
○まとめ
根の伸長、微生物の多様性の視点から、健康な土つくりのためには水と有機物の管理が欠かせない。これは人類が自然のプロセスから学んだ技術である。