公益社団法人日本技術士会北海道本部

第８９回技術交流研究会
日時　　平成１４年６月６日（木）午後１５時３０分～１７時３０分
場所　　札幌市中央区北４条西５丁目（ＴＥＬ　０１１－２３１－６７１１）
　　　　　　ＫＫＲホテル札幌（札幌共済会館）

出席者数　　　名
情報交換
講演　＂人工関節の現状と将来＂
北海道大学大学院工学研究科システム情報工学専攻
生体システム工学講座生体物理工学分野
　　　　　　　　助手　工学博士　　西村　生哉　氏

＜要旨＞
１９６０年代初頭にイギリスのＣｈａｒｎｌｅｙが股関節全置換術（Ｔｏｔａｌ　Ｈｉｐ　Ａｒｔｈｒｏｐｌａｓｔｙ，ＴＨＡ）に成功して以来、人工関節は本格的に発展した。現在では慢性間接リウマチなどによる股関節症の際に行われるＴＨＡは世界中で年間３０万例以上にのぼる。現在様々なタイプの人工股関節が市場に出回っているが、その耐用年数には限りがあり、術後数年～十数年で再置換術が必要となる。耐用年数はインプラントのタイプ、患者の固体差、手術手技等によりばらつきがあり報告も様々であるが、再置換の一番の原因はインプラントの緩み（ｌｏｏｓｅｎｉｎｇ）である。ｌｏｏｓｅｎｉｎｇの発生原因は摺動面から発生するポリエチレンの摩耗粉、インプラント（骨セメント）と骨との応力環境異常などが挙げられている。
我々の研究グループでは、この摺動面の摩耗とｌｏｏｓｅｎｉｎｇとの間に密接な関係があることに注目し、摺動面における超高分子量ポリエチレン（ＵＨＭＷＰＥ）の摩耗粉の発生を防止するための、新しい摺動面形状に関する研究を行っている。また、人工股関節インプラント時における骨セメントの応力環境を最適にするために、有限要素法（ＦＥＭ）による人工股関節ステムの最適化設計を行っている。さらに生体への人工股関節の固定法として、骨セメントを用いないセメントレス法の改良などを行っている。
本会では、北大工学研究科における新しい研究の成果と、このような研究を行うために不可欠である医学系研究分野（この場合、具体的には整形外科）との共同研究のあり方についてお話ししたいと思います。