公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第87回工業技術研究会
日時  平成13年12月6日(木)午後15時〜17時30分
場所  札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号
      (株)ドーコン A会議室

出席者数   名
情報交換
講演 “高齢社会と褥瘡(床ずれ)” −工学的アプローチ−
北海道大学大学院工学研究科 システム情報工学専攻
生体システム工学講座 生体計測工学分野
  助教授 高橋 誠 氏

<要旨>
わが国は21世紀にこれまで人類が経験をしたことのない高齢社会を迎える。このことはいわゆる寝たきり老人の増加、さらに褥瘡患者の増大をも意味し、その発生件数の低減が急務である。そのためには、褥瘡の発生機序の解明が重要である。また、「褥瘡」および「褥創」という2つの用語は看護の分野ではよく知られた用語であるが、これらの用語の違いには実は工学的な差があると考えられる。その説明には応力(stress)の概念を用いるのが便利である。また、応力の概念を用いるとこれまで困難であった「褥瘡・褥創」の発生原因をより正しく解明することができ、増大するであろう褥瘡患者への対応にも有用である。
これまで褥瘡の発生は“長時間の「圧迫」のために皮膚および軟部組織が循環障害を起こし、壊死となった状態”と理解されていた。ここで、圧迫とはどのような力(force)を表しているのであろうか。圧迫とは生体組織に外部から及ぼす力のようなイメージであり、また、皮膚や組織を押し付けるように働く圧力(pressure)のような力と考えられる。この点から褥瘡を英語表記ではpressure ulcersとするのも妥当なように考えられる。しかし、循環障害を生じる部位は毛細血管であり、これまでの考え方では皮膚表面での外力から毛細血管までの力の伝わり方がこれまでの考え方では明らかではない。また、圧迫のみで褥瘡が発生するのではなく、摩擦やズレによっても生じ、さらに、圧迫にズレが加わると褥瘡が発生しやすくなることもすでに報告されている。これらの点を統一的に説明するために応力という用語を用いるべきであると考える。
また、褥瘡発生リスクを評価するための体表面接触圧計測法等についても述べる。