公益社団法人日本技術士会北海道本部

第８６回工業技術研究会
日時　　平成１３年９月６日（木）午後１５時～１７時３０分
場所　　札幌市厚別区厚別中央１条５丁目４番１号
　　　　　　（株）ドーコン　Ａ会議室

出席者数　　　名
情報交換
講演　＂農業・農村の多面的機能について＂
住友　寛　氏（農業部門）

＜要旨＞
農業・農村を取り巻く現状は、食料自給率の低下、農家戸数・農業就業者数の減少、耕地面積の減少、輸入農畜産物の増大、農村における高齢化と少子化の進行等、相変わらず閉塞感に包まれている。
農業・農村の役割は農畜産物生産の手段及び場所であり、それに付随する技術も、生産性の向上に資するものが主体であるが、近年、それ以外の役割として農業・農村の多面的機能が評価されており、それに伴い、周辺技術も多面的機能を発揮する方向で運用され始めている。
農業・農村の多面的機能には、①国土の保全機能、②水源の涵養機能、③自然環境の保全機能、④良好な景観の形成機能、⑤保健休養機能、⑥情操教育機能などがあり、これらを代替法、ヘドニック法、ＣＶＭ等の評価手法で評価額を算定すると、年間数兆円にもなることが立証されている。一例を上げると、平成１０年に農林水産省農業総合研究所が全国の水田・畑・農村を対象として、国土の保全機能や水源の涵養機能等を代替法で算定した結果、年評価額は６兆９０００億円であった。
これからの日本及び北海道農業にとって、このような多面的機能を有する農業・農村を総合的に振興させていくことが重要な課題であり、方策として、①農村整備の推進、②農村の活性化、③農村の高度情報化、などが上げられる。
農村の総合的な振興が図られていくと、農村を訪れる都市住民が自然発生的に増加する現象が全国的に起こり始めている。北海道を例に取ると、グリ－ン・ツ－リズム（滞在・体験型余暇活動）やクラインガルデン（市民農園）、子供達の自然体験・農業体験等による、都市と農村との交流活動が各地で展開されている。これは、新鮮で美味しい農畜産物やゆとりと潤いのある休暇を求める都市住民と、農畜産物や農畜産加工品の販路開拓・確保など新たなアグリビジネスを模索する農業者とによる経済交流でもあり、農村を舞台とした地域振興といえる。
ファ－ムイン、農家レストラン、観光農園、農畜産物加工体験、乗馬体験等、グリ－ン・ツ－リズム施設と呼ばれる交流施設が、現在、全道に１，２１９施設あり（平成１３年１月現在）、道内外の都市からの来訪者を受けている。これらの施設は、農業・農村の多面的機能を活かし、それを経済活動に結びつける北海道の地域振興方策として、着実に根を下ろしつつある。