第82回工業技術研究会
日時 平成12年9月7日(木)午後15時〜17時30分
場所 札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 名
情報交換
講演 ”地すべりについて”
轄\研エンジニアリング
会員 横田 寛 氏 (応用理学部門)
<要旨>
斜面崩壊を引き起こす現象には「地すべり」、「斜面崩壊、山崩れ、崖崩れ」、「土石流、泥流」、「落石」などいろいろなタイプとその呼び方がある。しかし、それらの呼び方は曖昧に使われているように思われる。その理由としては、
@現象自体が整理しにくい面を持っていること
A斜面災害は一般の人々の社会生活に密接な関係があり、学問の分野というよりむしろ実用面や社会的側面からの呼称も混じっていること
などが考えられる。
現在世界的に最もよく使われているのはアメリカ地質調査所のバーンズ(Varnes)による斜面運動の分類である。バーンズの分類は地形・地質のみならず、メカニズムの点からの洞察も含まれており、世界的な評価を得ているが、日本の実状には必ずしも合っているとはいえない。
日本においては、現象面、災害種類、発生機構、地質条件など、日本の実状から比較的単純に分類したものが現在実用的に広く用いられている。
北海道は歴史が浅く、斜面災害による被災が古文書、絵図などに記録されているものは数少ない。しかし、北海道においても有史以前から地すべりや崩壊が発生してきたことは国内の他の地域と同様である。各地に生活の場が拡がった1900年代以降、特に北海道開発が促進され始めた戦後以降は道内各地で斜面災害が頻発している。
北海道の気候は、日本の他の地方と比べて寒冷で降水量が少ないという特徴を有している。そのような気候下で発生する斜面変動の特性は、他の地方と異なることも多い。北海道におけるこれまでの斜面災害を振り返ると、3月末〜5月の融雪出水期、8月〜10月の台風・低気圧通過に伴う集中豪雨時などに多様なタイプの斜面変動が発生している。
「地すべり」というものは生命や財産に被害を与える有害無益なものという認識がある。しかし日本では古代から、その緩やかな地形や水が豊富であることを利用して農地として開発されてきた。近年、地球環境の保全が叫ばれてきているが、地すべり地は狭い範囲に多様な生息環境が混在しているところから、地域的な生態系の保全に関して有効に機能するところといえる。また、地すべり地と周辺の森林との組み合わせにより、広域にまたがって生態系の繋がりを維持するのに大きな役割を果たすことが出来る可能性が北海道工業大学の岡村教授によって指摘されている。
参考文献
・ 小橋澄治・佐々恭二「地すべり・斜面災害を防ぐために」(山海堂、1990.3)
・ 地すべり学会北海道支部「北海道の地すべり*99」(1999.9)
・ 岡村俊邦「地すべり地のエコロジカルな土地利用に関する提言」(地すべり学会「地すべり」第31巻 第1号、1994)
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