第79回工業技術研究会
日時 平成11年12月9日(木)午後3時〜5時半
場所 札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号
北海道開発コンサルタント(株) 会議室
出席者数 名
情報交換
講演 ”ごみ焼却炉の燃焼ガスによる高温腐食”
北海道大学大学院工学研究科 界面制御工学講座
教授 成田敏夫 氏
<概要>
ごみ処理は、埋め立て処分が処分地の不足と公害問題のためむずかしくなり、焼却処分へと移行した。この焼却は“処分”が目的であったが、最近、エネルギ有効利用の観点から、給湯に利用され、さらには焼却熱による発電へ、と展開されている。蒸気温度は給湯に利用されていた250℃から、発電を目的として蒸気温度が上昇し、帯広市に建設された日本における最新鋭の焼却炉では蒸気温度400℃で運転されている。さらに、国家プロジェクトとして、500℃をターゲットとした基礎研究が進められている。
一方、ごみに含まれている塩素(塩化ビニル、食塩、等)が燃焼によってダイオキシン等の有害物質に変化し、問題となっているのはご承知の通りである。特に、このダイオキシンは規制の緩い小型の焼却炉で発生したことから、大都市近郊ではパニックの状態となっている。そのため、小型の焼却炉の建設は当面見送られている。このダイオキシンの生成過程については、現在、詳細な研究が進められているが、焼却炉の運転・停止時、ごみの焼却が不十分のときに発生しやすいと言われている。そのため、焼却炉を大型化し、高温・連続燃焼が計画されている。
一方、ごみの高温・連続燃焼は、焼却炉の材料にとって、今までに経験したことのない、厳しい腐食環境を招来している。現在、ごみ焼却はダイオキシンに代表される公害問題としてクローズアップされているが、材料の腐食・防食は、Key Technology となっており、この材料開発無しでは、ダイオキシンの低減さらにはエネルギ有効利用も適わないものである。従って、ボイラー、タービン、ごみ焼却炉等の金属材料の高温腐食・防食をテーマとして研究している著者らにとっては緊急な課題である。
本講演では、私はダイオキシン等の公害・環境の専門家ではないのでこれには触れないで、ここでは、ごみ焼却炉に見られる高温腐食と材料工学との関わり合いを中心に、紹介する。
@ごみ焼却炉の高温腐食の特徴 −塩素と硫黄による加速腐食−
A新しい材料開発と防食法
B新しい焼却炉への移行
ごみの焼却熱は貴重なエネルギ源であり、今後建設される焼却炉では、発電・給湯等への利用が義務化されている。さらに、燃焼した後に残る灰の処理は、大変重要な問題となっている。この灰にはダイオキシンが含まれる可能性が強く、そのまま埋め立て処分することはできない。従って、非常に高温で燃焼させて、その熱で灰を溶融・固化させる新しい焼却炉の設計と建設も計画されている。例えば、愛媛県松山市では、燃焼灰をプラズマ熱で溶融している。しかし、この際、発電した電気が大量にプラズマ発生に使用されている。溶融固化した灰の有効利用もまた緊急な課題である。
家庭から排出するごみとともに、産業廃棄物の処理はさらに困難で多様な側面を有する。現在、リサイクルを中心にして研究・開発が進められているが、例えば、廃家電の処分に、500−600℃の中間温度で、空気を絞って燃焼させる、いわゆる蒸し焼きにして、プラスチック類を溶かし、金属素材を酸化させないで、分離する“焼却処理・処分”が行われている。今後、ますます多様な処理法が行われると予想され、それにともない、焼却炉にも耐食性の新しい材料が要求される事になるであろう。
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