第69回工業技術研究会
日時 平成9年12月4日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市厚別区厚別中央1条5丁目4番1号
北海道開発コンサルタント(株) 会議室
出席者数 19名
情報交換
講演 ”日本における建築物の地震被害と耐震設計”
北海道大学大学院工学研究科建築工学専攻
教授 工学博士 城 攻 氏
<要旨>
1995年の兵庫県南部地震では、6千名を越す死者と20数万棟を越す建築物が大被害を受け、戦後に建築基準法が制定されて以来、最大級の被害を受ける大震災となった。我が国は環太平洋地震帯に位置する有数の地震国であり、北海道に限っても釧路沖地震・北海道南西沖地震・三陸はるか沖地震など、ここ数年の間に大型の地震が連続して発生している。地震による被害は、構造物の損壊やライフラインの障害などのハードな損傷のみならず、人命を始め動植物の死傷や社会・経済に与えるソフト的ロスなど広範囲にわたるが、ここでは建築構造物の被害例に焦点を絞って紹介する。被害の内容では、鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造・石造等のように、使用する材料の性状や構造種別によって異なること、被害原因では地震動そのものによる構造体の破壊の他に、週辺地盤の破壊による2次被害や、地震に伴って発生する津波および火災による被害など多様であること、また、寒冷地仕様の木造住宅など地域性と関係する被害の相違についても説明する。
地震動は、台風や豪雪に比べて破壊エネルギーが極めて高い自然現象である上に、発生頻度が少なく、動力学的挙動に支配されているために、地脹動そのものの性状が未解明であり、発生予知も困難である。また、実構造物は大型のために実験的検証は縮小模型や部分模型が主流となり、多くの構造物は一品生産のために個別の力学特性を有している。従って、大地震の経験が各種構造物の実大実験となるため、地震の度に地震観測とその被害調査研究から学習して耐震設計法が発達してきたもので、今後もこの傾向は変わらない。日本の建築基準法も昭和27年に制定された後、2度の十勝沖地震や宮城県沖地震などの大地震から学んで改定されてきた経緯を概観し、現行基準が要求している耐震性能とその設計法について紹介する。更に、先年の阪神・淡路大震災からの教訓をどのように活用するかを模索している建築界の現状についても言及したい。
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