公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第63回工業技術研究会
日時 平成8年12月5日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数  名
情報交換
講演 ”触媒のはたらき”
     北海道大学大学院工学研究科材料化学系
        教授 理学博士 竹澤暢恒 氏

<要旨>
衆知のように、触媒を反応系に存在させると、それ自身は変化なく、化学反応の速度を格段に増大させることができる。反応によっては、触媒存在により反応速度が1050倍以上にもなることが示されている。このような触媒のもつ特異な機能を利用して、数多くの化学製品が生産されている。現在では、化学工業プロセスの収益のほぼ75%が触媒を用いたプロセスにより得られている。最近では、これをこのような目的に使用するばかりではなく、環境浄化やエネルギー原料の製造あるいはその高効率変換に利用することが積極的に行われている。環境浄化においては、自動車用触媒や各種民生機器用触媒、センサなどとして利用されている。一方、エネルギー原料などへの利用においては、燃料の製造やその高効率変換などの他、触媒反応を組み込んだヒートポンプ、低温排熱回収などが検討されている。このような触媒の機能は、触媒存在下において、新しい反応経路が形成されること、および、触媒がその経路によりリサイクルされることより発現する。このような基本機構はすでに明らかであるが、問題はどのような反応経路を経て反応が進行し、また、それがどこで起こっているのかを具体的に知ることが重要である。これを理解しなければ触媒を意図的に開発することはできない。このような触媒作用のからくりは、この20〜30年の間に、各種表面科学分析手法を用いて、反応性中間体や触媒表面状態を実観測することにより明らかにされるようになった。本講では、化学製品の製造や環境浄化およびエネルギー原料の製造や利用に関する基本的触媒反応を取り上げ、その反応機構を通して、これらの反応における触媒の役割を眺めてみた。