公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第62回工業技術研究会
日時 平成8年10月3日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数  名
情報交換
講演 ”破損解析と機械災害事例”
     北海道大学工学部機械工学科
        教授 工学博士 野口徹 氏

<要旨>
機械・構造物は時として破壊する。災害となり人的被害に及ぶ場合もある。いかなる材料でも過大な力が加われば破壊する。従って、これを避けるために構造強度設計がなされる。しかしそれでもなお、しばしば破壊事故が起こる。
破損解析は、破面を始めとする部材の破損状態、製作および使用履歴に関する情報、ならびに破損時の使用状態から解放される力学条件の照合によって、部材の破損・破壊の原因を推定する手法である。最も基本となるのは次の二つである。
T.破損状況および破面のマクロおよびミクロ的特徴による破壊形式の推定と、実験または破壊の基本特性から推定されるその破壊形式に対する「材料の強度」の推定。
U.破損時の力学条件から算出される破損部の「作用応力」の推定。
TとUの一致が破損の原因である。破損箇所が多数ある場合は、各破損部分について上記の破壊形式、材料強度および作用応力の照合を行うことにより第一破損を特定する。他の破損は2次被害として、破損全体のシナリオの中で矛盾なく説明される必要がある。
部材の破損は、(1)横造強度設計、(2)素材部材の製作加工、(3)使用保守管理、のいずれの段階かの要因によって、破損安全率=(Tの強度/Uの応力)となった時に生ずる。破損安全率は設計における、いわゆる安全率とは別であり、時として全く関係がない。
本講では、延性破壊、ぜい性壊、疲労破壊、環境ぜい化破壊など、各種の破壊形式による、また、種々の要因に起因する破損事故例を題材として、調査の経過と導かれた破損の原因、およびこれにおける技術的問題点について述べられた。