公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第57回工業技術研究会
日時 平成7年12月1日(金)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数 21名
情報交換 PL法のしくみと対応その他
講演 ”光を用いた生体計測法 基礎と応用”
     北海道大学・電子科学研究所
        教授 理学博士 田村守 氏

<要旨>
生体組織や人体内部の形態、及びそこで営まれる種々の生科学的・生理学的変動を外部から傷をつけないで(無侵襲的・非観血的)計測する技術は、生物学や医学、特に臨床医学の分野で必要不可欠なものであり、X−線CTがその代表例である。近年、従来の形態学的な手法から1歩進めて、生体の機能情報や代謝情報を得ようとする試みが活発になり、画像計測の定義を拡張すれば”画像計測”あるいは無侵襲性を拡張した”生体機能画像計測”と呼ぶべき分野の大きな可能性が生まれつつある。我々の最終目標は生体組織を作り上げている個々の細胞の形態を空間的・時間的に区別して計測することである。
種々の生体画像技術の中で光、広い意味での電磁波、の持つ生体に対する無侵襲性はすでに述べたように最も短波長でのX−線CTやガンマカメラ、又、最も長波長でのラジオ波を用いるNMR−CT(MRI)としてすでに医学の分野で実用化されている。一方、物理や化学の分野でなじみの深い紫外 可視 赤外領域の生物学、医学への応用は顕微鏡を除いて比較的限られてきた。これはこの領域の光が生体組織に対し透過性が殆どないと考えられてきたことによる。近年、この領域の光の中で近赤外領域(700〜1500nm)のものは、比較的高い生体透過性を有することが見い出され、同時に光通信の分野がこの領域の光を使用することにより、種々の光技術が発達し、これらを用いて最近では人頭部(〜30cm)の透過光を検出し得る所まできている。
ここでは近赤外光に的を絞り、”光生体画像計測”の原理と医学分野への応用例をまとめた。特に生体系における分光計測の持つ基本的な困難さ−光の多重散乱−の問題とピコ秒、フエムト秒領域の時間分解計測の有用性、そして最終目標である光CTの実現への道筋をまとめた。