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第56回工業技術研究会
日時 平成7年10月5日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 8名
情報交換
講演 ”資源開発の現場経験からみた環境問題”
北海道大学工学部資源開発工学科
教授 工学博士 田中威 氏
<要旨>
地下資源の開発は、地下において固体または流体の形でバランスを保って存在している物質を地上に搬出する訳であるから、地下または地上の環境にある程度の影響が出るのは否めない。理想的にいえば地下資源の開発終了後は、原型に復するようにすべきであるが、地上はともかく、地下の復元はまず不可能であろう。資源の開発前から開発中(操業中)にかけて環境工学的見地から細心の注意を払い、開発終了後の後遺症をできるだけ少なくしなければならない。
地下資源の開発は、資源物理学の立場から見れば、原料資源(鉱石、スクラップ等)に低エントロピー資源(多量の水と空気、電力・石炭・石灰石等)を吸収させて、製品(金属等)をつくることであり、エントロピーの大部分は廃物廃熱として捨てられる。エントロピーを判りやすく「汚れ」と解釈すると、鉱山現場から出る坑水、廃水、鉱煙、捨石、鉱さい等は大きなエントロピーを持つ廃物であり、鉱害の元凶となるものである。
今後、地下資源を有効に開発するためには、このような廃物の出現を極力押さえ、鉱害などというものを二度と起こしてはならない。
昔、鉱山現場では、”一に市況、二にナオリ、三、四が無くて五に技術”というやや自嘲的な言葉がささやかれていた。技術を軽視した経済優先のこの言葉に、当時まだ若かった講師は反発を覚えたと言う。この言葉で代表されるような思想が、鉱山業に対して環境破壊の元凶・公害の発生源という負のイメージを与えたように思えてならない。地下資源開発技術者は、今後とも不断の勉強を怠らず、最先端技術を含む関連諸技術に対して常に研鑽を積み、資源・エネルギー・環境問題を三位一体としてとらえた開発プランを推し進め、「持続可能な地下資源開発」の実現に貢献しなければならない。
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