第52回工業技術研究会
日時 平成7年2月2日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 15名
情報交換
講演 ”近年の土木計測について”
札幌理工学院土木学部
教授 名畑宏一 氏
<要旨>
1.土木技術と計測
土木技術は、地球の表層部を社会生活にとって価値ある様式に変形する工学と云えます。このような特性から、土木工学における計測対象は地球そのものであることが多く、計測を実行する際の環境条件には恵まれていず、計測器が過酷な条件に曝されていることも多いと云えます。
(1)建設工事における計測の現状
近年、建設工事においては、工事の件数や規模が拡大し、その局面は大幅に多様化、複雑化しております。工事の省力化・効率化の必要性を高め、工事の一層の機械化・自動化・ロボット化を進行させています。建設技術の発展が必要不可欠で、その中でも計測技術の果たす役割は大きいと云えます。最近、様々な工事現場で計測が実施されるようになってきており、土木学会にある小委員会が実施した現場計測に関するアンケート調査結果では、工事費の約2%が計測費用となっており、工種によっては約7%にのぼるものもありました。最近の計測技術は日進月歩で、特に衛星(GPS等)やレーザー、超音波、光ファイバー等のハイテク技術を駆使したセンサ技術の進歩は目覚ましく、測量や施工機械の測位に積極的に取り入れられています。更にコンピューター特にパーソナルコンピューターの飛躍的な進歩と普及がデータの集中管理や無人自動計測・多点高速処理・制御・予測・シミュレーション技術・3次元画像処理(CG)等の高度技術を低コストで実測させるのに大きく貢献しています。
(2)建設工事における計測の意義
現場計測はどのように関連しているか具体的に考えてみると、施工管理、安全管理、設計手法の確認、維持管理という目的でなされていることが多いのです。まず、施工管理、安全管理という目的は今まさに工事を施工しつつ、責任者は一時も不都合が生じないように監視し適切な意志決定を下さなければならない条件下で行われます。(情報化施工)これに対して設計手法の確認という目的は、現場の即時的な意志決定と関連するものではなく、予備的な試験施工、未経験な新技術施工、新しい設計理論、技術・研究開発の支援という状況下で行うものと考えられ、多くの場合情報化施工での設定という意志決定行為にフィードバックしようとするものです。また、維持管理という目的で活用された場合は、構築された社会基盤としての建造物の状況を維持計測管理して適切な補修をしながら安全かつ有効的に活用し、更には、データの蓄積を行い、今後の設計・施工の資料を得る狙いもあります。
2.計測システム
センサの種類
建設工事に使用される一般的センサは、次のとおりです。
圧力 土圧計、水圧計、圧力計、応力計
荷重 ロードセル・ロックボルト軸力計・鉄筋計・ひずみ計
変位 変位計・継目計・沈下計・伸縮計
傾斜 傾斜計
加速度計 加速度計
温度 温度計・熱電対・サーミスタ
センサにはひずみゲージ型、カールソン型、差動トランス型など変換方式の異なるものもあり、それぞれ長所・短所があります。現状としては、ひずみゲージタイプが多方面で使用される傾向にあります。北海道内での計測の事例をあげると次の通りであります。
1.二風谷ダムの大規模放流管据え付けに伴う温度計測。
2.美利河ダムの地下連続壁の挙動計測。
3.ダムの湛水試験時の挙動計測。
4.新中野ダム(嵩上げダム)の堤体挙動計測。
5.NATM工法(山岳トンネル、地下鉄工事)の挙動計測。
6.トップベース(マイ独楽)を砂浜海岸に使用した場合の沈下観測。
7.発砲スチロールを用いた計量盛土の施工計測。(EPS工法)
8.ニールセンローゼ橋における斜材張力管理。
9.地すべり計測
10.山留計測
11.斜面掘削工事における情報化施工管理
12.重力式コンクリートダムの揚圧力と漏水量の計測
13.ロックフイルダムの堤体挙動計測
等
主要参考文献
1.NATM工法 北海道開発コンサルタント(株)
2.その他、北海道開発局発表文献
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