公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第51回工業技術研究会
日時 平成6年12月1日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数 16名
情報交換
講演 ”医用材料と人工臓器”
     北海道大学工学部生体工学専攻
        助教授 工学博士 村林 俊 氏

<要旨>
故障した臓器を取り換え、永遠の命を保とうとするのは、古くから人間の夢であった。これが現実に医療技術として実施され、患者の救命、延命が可能となったのは、ここ数十年のことである。一つは臓器移植であり、他の一つは人工臓器である。現在、人工腎臓、人工肺、人工心臓など各種の人工臓器が臨床の場で用いられている。人工腎臓は日本だけにおいても、10万人以上の腎不全の患者の生命維持に寄与し、人工肺は開心手術において無くてはならないものとなっている。このように人工臓器は臨床医療の進歩に大きく貢献しているが、しかし、それらの人工臓器の機能を完全に代行するものではなく、今後、人工臓器のさらなる発展が待望されている。その鍵を握るのが、その人工臓器に用いられる材料、すなわち医用材料である。
現在、人工臓器の材料として、金属材料、セラミクス材料、高分子材料、タンパク質などの生体由来材料など各種のものが用いられている。その選択は、医用機能性と生体適合性の観点から行われている。医用機能性とは、例えば人工腎臓では老廃物の透過性であり、人工関節では耐磨耗性、強靭性など、その装置に求められる物理的・構造的機能を発揮する性質であり、生体適合性とは生体に及ぼす作用、いわば材料による生物学的機能を意味している。材料が毒性を有する場合は論外であることは言うまでもないが、材料により炎症が生じたり、血液が凝固してしまうこともある。このような生体に悪影響を及ぼす反応が生じる場合には、その材料は生体適合性が劣ることとなり、生体適合性に優れた医用材料の開発が非常に重要となっている。
本セミナーでは、人工心臓と人工腎臓を中心に人工臓器と医用材料の現状について概括する。また、代用臓器としての人工臓器ではなく、癌や自己免疫疾患など難治性疾患の治療と予防を行う新たな人工臓器として注目されているアフエレーシスを紹介し、今後の人工臓器の可能性について述べられた。