第50回工業技術研究会
日時 平成6年10月6日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 15名
情報交換
講演 ”クリアビジョン−U”(EDTV−U)
北海道放送(株) 取締役 技術局長
工学博士 柏倉宏聿 氏
<要旨>
1.あらまし
今、わが国の地上波テレビはワイド画面化、高画質化への要求とその先に予想されるディジタル化とマルチメディア問題を抱え頭を痛めている。
現在、世界中を見渡しても高画質での放送を実施しているのはわが国の放送衛星からのハイビジョン放送ただ一つであり、放送している時間も番組も少なく、現在の地上波テレビにとっては恐るるには足らない筈である。
しかし、この11月末にはチャンネルは今までどおり一つであるが時間的にも番組的にもかなり補強される。すなわち、NHKおよび在京民放各社により毎日10時間以上、ハイビジョン番組が放送されることが本決まりになった。民放各社は将来のハイビジョンチャンネル確保のために系列をあげて新しい番組を製作するであろう。NHK、民放各社から無料で借り集め、再放送を繰り返している現在のハイビジョン放送とは大違いである。
’97年以降、BS−4が全機打ち上げられると今度はわが国に割り当てられた8CH全部を使っての本格的ハイビジョン放送が始まることになっている(a号機、b号機それぞれに4CH登載)。そして、8CH全部を使って放送が行われた場合、衛星放送の受信者は2,000年には34%、2007年には88%の普及率になるとの予測もなされている。このような状況になった場合、画質において決定的に劣る地上波テレビ局はキー局ローカル局の別なく視聴者に見放されるとの見方が強い。
2.高画質対策
衛星ハイビジョンに対する危機感から地上波テレビのハイビジョン並みのワイド化、高画質化に対する要求が生まれ、地上波テレビチャンネルの割り当ての枠内での新たな規格設定が行われた。新規格に基づく新たなテレビを「イー・ディー・ティー・ヴィー・トウ」と名付け「EDTV−U」と書くことにした。なお、EDTVのいわれはEnhanced Television説とEnhanced Definition TVの説がある。
(1)ワイド化対策
EDTV−Uの規格は、ハイビジョン並みの画質という狙いで作られたため、全てハイビジョンの規格設定と同じスタンスで決められた。すなわち、画面を視ている人が画面の迫力、一体感、感動などの心理的満足感を得るために必要な最低の画角30°以上とすること、画面の横と縦の比率をハイビジョンと同じ16:9とすること、画面高さの3倍の距離から見て画面のアラが目につかないことなどを目標に決められた(現行テレビの横と縦の比率は4:3、画面高さの7倍の距離から見て自然に見えることを前提に電波の幅まで含めて全ての規格が決められている)。
地上波テレビをワイド化、高画質化するにしてもまず第1に考えなければならないことは、現在、国内に8,000万台普及している現行受信機にも画質はともかくEDTV−Uの画像も映し出せなければならない。ということは16:9という横長の画像を4:3の現行受像機の画面の中にどの様に映すかということである。これは、いろいろ検討の末、4:3の画面枠内に16:9のワイド画面をそっくりはめ込むことにした。このためワイド画面受像機に比べ画像が75%に縮小され、垂直方向の解像度が3/4に劣化する。同時に画面の上下に画面高の1/8に相当する幅の黒い帯が生じることになった。この部分にはEDTV−U画面であることを識別させるための信号及びEDTV−U専用受像機の画質改善のため以下に述べるような各種補強信号を載せることにしている。
(2)高画質化対策
近い距離から視ても画面がボケないようにするためには、画面信号の高周波成分を伝送しなければならない。このためには現行テレビでは伝送できない高周波成分を特殊な方法で画像信号に多重する方法を採った(画像の3次元処理)。
また、垂直方向の解像度をハイビジョン並みに上げるためには走査線の数を1,000本程度にしなければならないが、これは周波数帯の制限により実現不可能である。このため、次善の策として走査線を画面の上から下に順々に並べる順次走査という方法を採ることにして、現行テレビの欠点のひとつである水平な線がチラつく現象を目につかないようにして画質の改善を図った(現行テレビは走査線を1本おきに並べて1枚の粗い画面を作り、次に今の走査線の中間に当たる部分を通る走査線でもう1枚の粗い画面を作って前の画面と重ね合わせて1枚の完成した画面とする飛越走査であるためチラチラが目につく)。
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