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第49回工業技術研究会
日時 平成6年8月4日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 11名
情報交換
講演 ”トンネルの地質調査から補修調査まで”
明治コンサルタント(株)札幌支店
技師長 石井正之 氏
<要旨>
1.はじめに
最近、道路が山岳部に延びていくのに伴い、道路トンネルの数が急激に増加している。特に、一般国道と高速道路のトンネルの伸びが急増している。1991年4月時点で、道路トンネルは、6,480箇所、総延長1,798kmに及んでいる。総延長が延びるのみではなく交通量の増大に伴い、第2東名高速道のように掘削断面が230m2(掘削幅20m)に及ぶ大断面トンネルが計画されている。
一方、供用後変状の発生しているトンネルが、1989年の調査によると、全トンネルの12%程有り、漏水のあるものは39%に達している。しかも供用後4年以内に変状が発生したトンネルが変状トンネルの8%程ある。トンネルの維持管理が大きな問題となっており、1993年には「道路トンネル維持管理便覧」が発行されている。
トンネルの建設技術は、全断面掘削工法、トンネルボーリングマシーンを利用した掘削等により工事を機械化、省力化し、作業の効率化を図る方向で開発が進んでいる。
このような中で、トンネルの調査技術に対してはより正確さを要求されるようになってきている。
2.トンネルの地質調査
トンネルの地質調査でのポイントは、坑口の評価と湧水予測であると考えられる。
(1)坑口の評価では、地形判読により地すべり・崩壊地形がないかどうかの判定がまず第一に重要である。全く予備知識のない地域でも1/2万5千の地形図を丹念に判読すれば、規模の大きい地すべりは判定可能である。
(2)坑口が地形的に良好に見えても、破砕帯が存在していたり、かつて滑って落ち残った部分がゆるんだ状態で残っていることがあり、ボーリングにより地質の確認を行っておくことが必要である。
(3)湧水予測では、最近開発された電気探査の一種である「比抵抗映像法」が、地下水胚胎層の把握に有効である。
(4)事前の地質調査では、支保パターン決定のための正確なデータをどこまで得ることができるかがもう一つのポイントである。NATM工法では、計測結果をフィードパックして施工するとは言っても、施工中のパターン変更は工程との関係で困難なことが多い。
3.トンネル施工中の調査
施工中の調査は、A計測が主体となる。中でも切羽観察が重要で、できれば専門の技術者が行うことが望ましい。
(1)施工中の調査の目的の一つは、支保パターンが妥当かどうかの判定を下すことである。日常的な管理は、管理基準値を決めておき内空変位測定、天端沈下測定等により行うが、変状が発生した場合にはFEM解放により対策工を計画する。
(2)施工中調査のもう一つの重要な役割は、施工実績と地質・地山挙動の関係のデータを蓄積し、将来の類似地山に対しての参考資料を得ることである。
4.トンネル補修調査
トンネル補修調査では、変状原因調査と対策工のための調査に分けて考えると便利である。
(1)変状原因調査としては、トンネル周辺の地形・地質踏査、クラツク展開図の作成、ボーリンクによる覆工厚・コンクリートの品質検査や背面地山状況の把握等がある。
(2)対策工のための調査としては、トンネル縦断・横断測量、内空変位・クラツク変位測定、凍結深測定等がある。特に寒冷地では、通年のクラツク変位測定により季節的な変動の有無を見る必要がある。
(3)さらに、対策工の検討のためには地山試料試験により地山の物性値を把握しておく必要がある。
(4)対策工法としては、本体の補強を行う工法(内巻きコンクリート工法等)とトンネル周辺の地山補強を行う工法(ロックボルト工法等)があり、それぞれのトンネルの変状状況、地山状況、経済性を考慮して決定する。
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