公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第48回工業技術研究会
日時 平成6年6月9日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数  名
情報交換
講演 ”凍上現象と凍土の諸物性”
     北海道大学低温科学研究所
        講師 理学博士 石崎武志 氏

<要旨>
寒冷地で冬期に土が凍結する際に、地面が持ち上がることがある。これは、凍結面へ水が吸い寄せられて氷として析出することにより起こる現象である。この現象を凍上現象と呼ぶ。この現象により、道路が持ち上がり、舗装面に割れ目ができるなどの凍上被害が生ずる。冬の初めの良く冷え込んだ朝には、地表面に霜柱が見られる。凍上現象は、この霜柱が地中内で生じた現象と考えることができる。この凍上現象は、多孔質ガラスやポーラスフィルター中の水の凍結の際に見られることや水の代わりにニトロベンゼン、さらに液体ヘリウムなどを用いても見られることが確認されている。このため、凍上現象は、多孔質体中で液体が凝固する際に見られる特有な現象と言うことができる。
凍上が著しく発生したあとに凍土を掘ってその断面を見ると、厚さ数mmから数cmの氷の層があり、これを氷レンズ(アイスレンズ)と呼ぶ。こうしたアイスレンズの厚さの和が凍上量になる。アイスレンズの巨大なものはカナダ北極海岸やシベリアのヤクーツク周辺の永久凍土地帯にある円錐状の丘(ピンゴと呼ばれる)の内部にみられる。その丘の高さは数mから数十mにも達する。丘の内部は、ほとんど氷から成っている。このピンゴの成因も、凍上現象と考えられている。
北海道の様な季節凍土地帯での道路建設や土木工事の際には、この凍上現象を考慮に入れなくてはいけない。また、シベリアやカナダなどの永久凍土地帯での天然ガスパイプライン等の建設の際には、永久凍土層の融解沈下を考慮しなくてはいけない。今後、ますます北方地域、特にシベリアの永久凍土地域の開発が進むと考えられる。その際は、凍土が持つ諸性質を十分把握しておくことが重要であると考えられる。