公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第42回工業技術研究会
日時 平成5年6月10日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル13F
   北海道開発コンサルタント(株) B会議室

出席者数 16名
情報交換
講演 ”アルミニウムに関する夢物語”
     北海道大学工学部金属工学科
        教授 工学博士 石川達雄 氏

<要旨>
アルミニウム金属の誕生には、トン当たり13,500KWhrという多大の電気エネルギーと約500kgの炭素を費やし1.2tの炭素ガスの放出を伴う。著者は省電力・高性能の新しいアルミニウム溶融塩電解製錬法の開発を夢みて、約20年前から実験的研究を行ってきた。この方法は現行製錬法のホール・エルー法と電解浴、原料、操業温度が異なるばかりでなく、電解槽の構造も、消耗する炭素アノードとアルミニウム・プール・カソードとが対向する通常の平面リアクターから、非消耗の炭素アノードを多数積層させる立体アクター(二重電極電解槽)へと全く新たな発想のものである。ここで、積層する電極面がそれぞれ傾斜していることを特徴とするサッポロ・バイポーラ・セルを考案し、電解槽の設計・製作ならびに実験室での運転を重ねて、電力原単位として、10,000KWher以下になりうることを確認した。
これらの結果を参考にして、当時の製錬6社による3,000A、5区画の試験電解槽が3週間の予定で運転されたが、操業で明らかになった問題点解決の努力もむなしく、間もなくこの新製錬法への企業からの期待は急速にうすれ、初期の夢は一時的に全く破れたのである。
著者は、これらの研究成果を生かすべく、アルミニウム・スクラップから付加価値の高い高純度アルミニウム製造という電気化学サイクル(A.塩素化、B.昇華精製、C.電解)を提案した。このサイクルにおいて、A.の塩素化を通常の化学反応ではなく、溶融塩系での溶融アルミニウム 塩素ガス燃料電池反応にすると、電解時に必要な電力の約60%が回収できる。現在の高純度アルミニウム製造に費やされる約30,000KWhrが4,000KWherになりうる。
この大きな夢にかけて、現在なお続けている実験的研究を併せて紹介した。