第34回工業技術研究会
日時 平成4年2月6日(木)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西3丁目建設会館
北海道開発コンサルタント(株) 2F会議室
出席者数 7名
情報交換
講演 ”病膏肓”
北開工営(株)
代表取締役 武藤征一 氏
<要旨>
病とは、生体の負った疾病であります。特に難病と言われるものの発病原因として、(1)極微小の不完全生命体であるウイルスの特性として、自己複製のための遺伝子しか持ち合わせないため、自らの種の保存複製は宿主生体を借りて行わざるを得ない。この“寸借”の結果としての宿主生体の発病、(2)生体細胞の核内に内蔵されるDNAとしてのゲノム、つまり生命発見のための遺伝情報総括体の情報配列についての“ひずみ”や“狂い”による遺伝子変調に伴う発病。
これらの発病原因についてのメカニズムが、近年、次々に明らかにされ始めました。ウイルス病の中でも恐れられているエイズウイルスは、外径1万分の1m/mの蛋白質コアの中に、わずかに次の7つの遺伝子(gag、pol、env、tot、tras/art、sor、3Vorf)を有しているにすぎない。しかし、この中のenvは容易に遺伝子上の変異を起こすため、エイズはワクチン療法では捉え難く、結局のところ宿主生体が倒れてしまうという難功万落の難病であります。
さらにガンは、難病中の難病と言えますが、その発症因を要約しますと、(1)発ガン物質や放射能によるもの、(2)増殖因子つまりGroth Factorの異常発現によるもの、(3)ガンウイルスが宿主生体遺伝子の近傍に、貼り付いて誘導するもの、といった三者に集約されそうであります。発ガンは、これらのすべてに正常生体内のプロト(潜在的)ガン遺伝子が係わっていることが判明してきました。プロトガン遺伝子とは、生体がその増殖や複製に必要な配列をもった遺伝子の全てを呼ぶもので、“適量であれば良薬であるものが、過多になると劇薬に変わる”といった必要悪の存在であります。
今日、次々と発見されるガン遺伝子について、その大半が正常生体中のプロトガン遺伝子を、一般ウイルスが生体中に侵入して身につけ再び世間に舞い戻ったものであることが知られるに至りました。尽きるところ難病とは、皮肉にも“身内の造反、身から出た錆”といった類のものと理解できそうであります。
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