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第33回工業技術研究会
日時 平成3年12月6日(金)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
北海道開発コンサルタント(株) A会議室
出席者数 12名
情報交換
講演 ”高温超伝導 −−その発見と研究の歴史 −−”
北海道東海大学教育開発研究センター
教授 理学博士 四方周輔 氏
<要旨>
超伝導という現象自身は1911年に発見されて以来長い研究の歴史を持つが、超伝導になる最高温度は約23K (K=ケルビンは絶対温度の単位で、OK=−273.15°C)であった。しかし、5年前の1986年に、スイスのIBM研究所のBednorzとM¨ullerによって約30Kの超伝導転移温度をもつ物質が、しかも従来の常識からは予想もできなかったセラミックス(酸化物)の系で発見された。そのため当初この発表は注目されなかったが、2ヶ月後に東京大学工学部のグループによってこのLa−Ba−Cu−O系で確認されて以来、日本と米国を中心に重要な関心事となった。さらに1ヶ月後東京大学工学部のグループによって37Kの物質La−Sr−Cu−O系が見つかり、その後各地でより高い転移温度を持つ物質が次々に報告され始めた。
しかしながら、驚くべき事にさらにたった1ヶ月後に、米国のHouston大学のC.W.Chu教授とAlabama大学のM.K.Wu助教授のグループが、一挙に40K以上も高い約90Kの物質を発見した。
この発見は全世界に衝撃を与えた。なぜなら、超伝導現象を液体窒素(約77K)による冷却で実現できるからである。従来超伝導現象は発見以来強電、弱電、コンピューター素子、医療機器等各種の応用技術の開発が行われてきたが、実用は基礎研究や一部の医療関係の分野に限られていた。それは、超電導に必要な温度を実現するのに、高価な液体ヘリウムを必要としたからである。しかし、この新たな発見は、安価な液体窒素で超電導を可能ならしめ、またさらに常温超電導への期待をも抱かせ、新たな産業革命への道を開いたのである。このため研究者の輪が企業も含めて急速に膨張し、1年間に行われた研究が通常の10年間分にもなるという事態が生じた。それと同時に、熾烈な特許争いが始まったのである。
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