公益社団法人 日本技術士会北海道本部

第32回工業技術研究会
日時 平成3年10月11日(金)午後2時〜5時
場所 札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45ビル
   北海道開発コンサルタント(株) A会議室

出席者数 8名
情報交換
講演 ”建築基礎と地盤”
     北海道土質コンサルタント(株)
        専務取締役技師長 池田晃一 氏

<要旨>
地盤と言う言葉は建設関連の工事においてはよく使用されているが、この言葉の定義は明確でない。地盤を構成するのは土や岩石であり、建設工事と関連した場合、この地盤の構成物である土などは力学的取扱いが必要となる。土が力学的取扱いを受けるようになってから50年以上を経過し、その性質は次第に明らかにされてきた。しかし、土に関連した理論や方法がすべて満足できる状態にはなく、建築基礎との関連では以下のような問題を有していることを認識しておく必要がある。
(1)土の工学的基盤は確実なものではなく、通常は経験論を拡張した慣用式が用いられている。
(2)土は見かけ上、同一でも性質は異なることが多く、目的の位置で調べなければ本当の事は分からない。
(3)模型実験で得られた解釈がそのまま現地の説明になるとは限らない。
(4)土の性質を数値で表現する必要はあるが、数値は与えられた条件で求まるものであり、工事の種別などによって取捨選択が必要となる。
建築基礎など地盤を対象とする工事では、これらの問題を解決するため地盤調査を実施し、個々の構造物基礎についての工法を決定している。しかし、現在行われている地盤調査法は、ほとんどの場合、「N値」を求める「標準貫入試験」(現在は、これが分かれば地盤、土に関する全てが分かると思っている人が大部分)のみが実施され、基礎工法などを決定している。
標準貫入試験は非常に便利な調査法であるが、これで得られる「N値」は土が強いか、弱いかの定性的判断を行うためのものであり、小数点を付けて用いるような高精度の絶対値でもない。また、N値は測定する調査技術者の技量や注意力の違いより得られる値に大きな差異が生ずることも認識されなければならない。
以上、建築基盤における地盤と調査について報告したが、地盤調査は地形や地質との関連、作られる建築物の規模、用途などを考慮の上で調査法が決定されなければならず、且つ、得られた数値の検証、適用式の妥当性なども検討する必要性があると結んでおられます。